SSブログ

ぼくの命は言葉とともにある を読んで [本]

s-DSC03012.jpg
ぼくの命は言葉とともにある      福島 智       致知出版社


福島さんは小さいころから目の治療で数々の苦しい経験をしたにもかかわらず、9歳で失明します。
その後18歳で聴力もなくし盲ろう者になります。

お母さんが高校生の福島さんに思わず手の甲の方の指に打った「さ と し わ か る か」の指点字はその後福島さんの他者とのコミュニケーション手段となりそれは世界で初めての盲ろう者のコミュニケーション方法で今は広く使われているそうです。

盲ろう者の大学受験は前例がないと聞いた時高校の先生の「前例がないのならば君が前例になればいい」と応援してくれ、大学生どころかついには大学の先生にまでなってしまいます。

目がみえず耳も聞こえないという状態だけでも驚くのにその人が大学の先生に!と読み始めた本でしたが、考え考えいつもの小説を読むのとは全く違った時間のながれの読書になりました。

読んでしまってもう10日以上になるのですがページを決めてまた読みかえしています。

薄っぺらな言葉での感想文は感想文にもなりそうにありません。

生きているということだけでも意味があることだという福島先生の言葉は深く心に残りました。




スウィート・ヒアアフターを読んで [本]

眠りにつく前のベッドの中での読書は楽しみのひとつです。
つい最近読んだのは
s-DSC00012.jpg
  スウィート・ヒアアフター
    よしもとばなな 幻冬舎

裏表紙のあらすじを読んで まさしくばななさんだ とあっという間にレジに並んでいました。

大きな交通事故で奇跡的に生還できた小夜子の、生きてるってそれだけですごいことなんだ!ということばや、生と死がすぐとなりの紙一重にあるという実感、亡くなった人は愛する人のそばでいつも見守っているということがそのままストレートに心にはいってきました。

あっという間に読んでしまったにもかかわらず、まだ終わっていないような後ひき状態であとがきに進みました。
そこでこの小説が2011年3月11日の震災の後にばななさんが自分の小説でなぜか救われる、なぜか大丈夫になる、そういう読者にむけて、そういう人がひとりでもいればいいと書かれたものだということがわかりました。

ふっと手にとった文庫本が3月11日を意識して書かれた小説だったなんて。
そして明日はあの東日本大震災から3年になります。

図書館の神様 [本]

久々手にとった文庫は、瀬尾まいこさんでした。

s-DSC00001.jpg

瀬尾さん、何年か前読んだなあと調べてみると2年前でした。

年代に関係なく人はその時の心情で読みたい小説は変わっていくようでもう10年来、やさしいタッチの読後ほんわかとしたものを選ぶようになっています。

高校時代に傷ついた少女、清(キヨ)が高校講師となって赴任した高校で部員1名の文芸部の顧問となりその部員の垣内君とのまるで先生と生徒が逆転しているような会話に私もいつのまにか引き込まれていきます。

そんなしっかりした生徒がいるんかい?そんなやる気のない顧問いるんかい?とひとりつっこみをいれながら、でもこんな垣内君みたいな部員がいる図書館っていいなあと思ってしまいます。

垣内君が言う落ち着いた言葉の一番は
「黙るべき時を知る人は、同時に言うべき時を知っている」(垣内君もある書物からみつけたらしいのですが)ですかね。

ラスト、教師試験を受けて講師から教師になった清が4月になって新しい高校へ赴任するときポストに卒業した垣内君から入っていた手紙がまた簡潔で垣内君らしくていいんです。
「先生が先生になるなんて、喜ばしく思います。先生の明日と明後日がいい天気であることを祈っています。」

そして清が高校時代バレー部のキャプテンをしていた時に自殺した部員のお母さんからの感動の手紙で終わります。
さらっと読めてふんわりとあたたかくなる瀬尾さん、好きです。

パン屋のパンセ [本]

ふとしたことで手にとった書物に感動した時それは人との出会いと同じく運命の出会いです。
s-パン屋のパンセ.jpg
歌集     パン屋のパンセ      杉崎恒夫   六花書林


バゲットを一本抱いて帰るみちバゲットはほとんど祈りにちかい

日の暮れはわれを異国の人にするたった一駅はなれた街で

「大切なものは見えない」友達にしたいキツネは街にはいない

こんがりと夕焼けベーカリーが焼きあげしクロワッサンを一つください

さみしくて見にきたひとの気持ちなど海はしつこく尋ねはしない


等々全て琴線に触れる短歌が並ぶ歌集です。

素人の私が言うのもおこがましいのですが何か透明感を感じるみずみずしい感性の短歌は作者が70代から80代に創作したものだということで驚きです。

「パン屋のパンセ」は90歳で亡くなられた杉崎恒夫さんの第二歌集だそうです。

ぜひ読んでみてください。

アントキノイノチ [本]

s-アントキノイノチ.jpg

アントキノイノチ    さだまさし  幻冬舎

図書館にいく時はたいてい絵本を借りたい時なのですが、時として思ってもいなかった絵本が「グイ」と目に飛び込んでまるで「私を読んで!」と主張しているかと思う時があります。

先週図書館へ行った際、まだ少し時間があったので2階の一般図書の方へ行ってみました。

予定としては何か短歌の本を借りたいと思ってのことだったのですが気にいるのがみつからず、本棚をぐるっとまわっていると、きたのです、あの「グイ」が。
それがさださんの「アントキノイノチ」でした。

さださんが「アントキノイノチ」を出版したことを知った時、内容も何も確認せず、「なんでこんなタイトルを??」とちょっとがっかりしていました。

でも、手にした「アントキノイノチ」は一気に読んでしまいました。

遺品整理業という職業はいつかテレビで紹介されていて知識としては知っていましたが、テレビの画面は序章でしかなかったとその仕事のすさまじさに胸が痛みました。

遺品整理業をやるようになった主人公の杏平が高校時代にかかわった卑劣きわまりない同級生とのページになる度に、気の弱い私は「もうやめよう、読むのはもう止めたい」とそう思いながら、でも読み進んでいきました。

いつのころからか、心がほんわりとしてやさしい気持ちになれる本しか選ばなくなった私にとって、あの同級生の陰湿さは読むに耐えきれないものでした。

さださん、こいうめにあったことあるのかしら?なんて馬鹿なことを思ったり、学校のいじめでこどもたちが自殺するという事件があちこちであった頃、さださんのコンサートのトークで「死ぬ位なら学校なんていかないでいい。そんな思いまでして行く所ではない。」とか「転校してまたいじめにあったらまた転校すればいい。」とか言っていたのを想い出しました。
主人公の杏平のお父さんがその時のさださんのような言葉で杏平をずうっと見守り続けます。

アントキノイノチ というタイトルの謎(私にとってかな?)がラストになってわかります。

それにしてもさださんてすごい!こんな本を書けるなんて!
というのが実は私が一番言いたかった感想なのです。

ちなみに「アントキノイノチ」の映画が明日から公開されるようです。

カラフル、彼女について [本]

s-カラフル.jpg
 
カラフル  森 絵都  文春文庫
 
次の展開が早く知りたくてまたたく間に読んでしまった小説です。(8月のことです。)
時間を惜しんであまりにも集中して読んでしまったので、後から何度も読みなおしてみました。

自殺した魂が天使の抽選に当たりもう一度生きるチャンスをあたえられて、自殺した中学生の体にはいりこみその中学生として過ごすことになります。
自殺して生き返った少年として過ごすうちに、少年が実は家族の愛に包まれて生きていたことを知り、思ってもいなかった同級生が少年のことをとてもよく見ていてくれたことを知り、自分がだれかわからないその魂が、少年に「おまえ、死ぬことを早まったよ」とつぶやくのですが、その魂は、実は…
ハッピーエンドに終わるこの小説は読んでいて「これってドラマ化できるんじゃあない?」と思ったのですが、既に昔、映画化されたそうなのです。知りませんでした。

s-彼女について.jpg

彼女について  よしもとばなな   文春文庫

吉本ばなな といえば「キッチン」 深く心に沁み込んだ「キッチン」の全編に流れる澄んだ空気の美しさに魅せられて以来、ばなな氏のその他の作品はなぜだかまるで違っていてなじめませんでした。(ごめんなさい。吉本ばななファンの方)
しかし、今回の作品は また惹きこまれて読んでいきました。

が、最後にきてのどんでん返し
短い人生を生きている間になんのいいこともなかったような女の子がいていいんだろうか?
こういうことも楽しかったよ、こんな幸せもあったよって死んでしまってから確認する哀しさ

こんな女の子がこの世にもあの世にもいなくなるといいなという願いをこの作品にこめたとあとがきにありました。
さすが、吉本ばななさん、とうなりながらも
これを読み終えてもう一週間にもなるのですが、人間未熟な私は未だに重い気持ちを引きずっています。
たかが小説で、と笑う方もいらっしゃるでしょうが…





卵の緒 [本]

s-卵の緒.jpg
卵の緒  瀬尾まいこ    新潮文庫

表題の作品ともう一編 7’s blood も収められています。

どちらもでてくるお母さんがとてもさっぱりで素敵です。

卵の緒 では通常では考えられないことが次々と出てきて驚くのですが、それが何でもなく普通に描かれています。 
 
大学三年の時のゼミの教授の奥さんが赤ちゃんを産んですぐに亡くなって教授も余命が短いというのを聞いて、逢いに行った赤ちゃんのことをすごく好きになり大学をやめてその赤ちゃんのお母さんになったというのが 卵の緒の主人公である小学生の育生の育てのお母さん。
育生の同級生にクラスで人気者の子がいてその子が不登校になっていて育生が会いにいくととても元気で明るく自宅にいてそのお母さんも全く普通に生活していたり、と読んでいるうちに気持ちよく瀬尾ワールドにはいりこんでいってしまいます。

二編めの7’s blood は高校生の七子と小学生の七生、短い期間だけ一緒に暮らすことになった異母姉弟のかもしだすなんともせつない優しい会話に、空気に、いつしかわたしの心はおねえちゃんになったりおかあさんになったりして読み終わった後はなんとも優しい気持ちになっているのです。

二編とも普通ではない普通の生活を普通のように描いた瀬尾ワールドの魅力満載の作品だと思いました。


さがしもの [本]

s-DSC00007.jpg
さがしもの 角田光代 新潮文庫

ベッドにはいってからのお楽しみで最近読んでしまった本です。

本にまつわる9つの短編なのですが、そのどれにも作者の本に対する思いがひしひしと伝わってきます。

本はいろんな人のさまざまな人生を疑似体験させてくれる魔術師です。

さて今夜も読むぞ~とベッドに入って本を開いた時のワクワク感はなんともいえません。

さて今度は何を読もうかな。

***
s-DSC00003.jpg
あまりにもみごとなパプリカの収穫に、もしも私に絵が描けたならと思ったことでした。
***


落合恵子さん [本]

s-DSC00001.jpg
落合恵子さんが朝日新聞に週一で連載しているエッセイが2008.4月から2011.3月分までが朝日新聞出版から「積極的その日暮らし」として出ていました。
また朝日に連載していたのですね。
古い新聞の切り抜きは1999~から2000年まで同じく朝日に連載されていた落合さんのエッセイ「午後の居場所で」の一部です。
10年以上前の切り抜きですが、その文章から流れる落合さん風エッセンスがなんとも好きです。
 
今回は週一でなく、毎夜寝る前に何週間分かをまとめて読めるなんて、なんとぜいたくな[exclamation]

***
s-姫睡蓮.jpg
***

四十九日のレシピのドラマ化とミラクルリーフ [本]

去年読んで感動した*四十九日のレシピ*が今日からNHKでドラマとして放映されるらしいのです。

昔から、小説を読んで感動してもそれが映画化されたら映画は見ないこと、映画をみて感動したらその小説は読まないこと、と過去の失敗から決めていることなのですが、今日からのドラマは見てみることにしました。

伊東四朗さん、和久井映見さん、風吹ジュンさんと好きな俳優さんが出るし、あの小説の中で重要な役割をした*井本*がどのように描かれているか、そして*井本*を演じる徳永えりさんにも興味がありますし。

***
グリーンの少ない寒い季節に、去年の食卓の上では花瓶にさしたハイビスカスの葉っぱのグリーン、蕾ができて花も咲いてとその生命力に大喜びしたものでしたが、今年は
s-DSC00005.jpg
これ、ミラクルリーフがきれいなグリーンで超元気です。
s-DSC00001.jpg
葉っぱを水に浸けておくだけで冬でもこうやって芽が出てきます。
まさにミラクルです。
***